2011年03月15日

経過報告と決意

3月11日

14時46分、大崎市岩出山の道の駅付近を走行中、携帯より緊急地震速報の甲高いアラーム。
この速報は、いつも大したことなく後続車も止まる気配がない。
そう思った瞬間、ハンドルをとられ、ハザードランプを点灯して緊急停止。

正直、震度5程度の揺れなら慣れている。
なんせ、最初の地震経験が昭和53年の宮城県沖地震。
学生時代、北海道東方沖地震の最激震地に居たこともある。
だが、この揺れの激しさ、揺れの長さはなんだ!?

あまりにも長すぎる揺れが治まり、とりあえず目の前にある道の駅の駐車場に入る。
駅の中のテレビを見ようと思ったが、完全に停電し、モノが散乱している。
明らかに異常な状況。

待ち合わせしていた同僚にすぐに会うことができたため、急ぎ目的地である江合川漁協へ向かう。

まずは放流直前のサケ稚魚の様子を確認する。
大丈夫。

ここでふと気付き、カーテレビをつけてみれば、ほぼ1年前にも発令された大津波警報。
大船渡は10mの津波が“既に到達”の報。

しばし後、気仙沼市の見慣れた光景が映る。
その中を何隻もの遠洋マグロ船を巻き込んだ巨大な波が押し寄せる。

次に見たのは、つい数日前に訪れた女川漁港の中で大型船が転覆する光景。

世界が変わってしまった。
声が出ない。

一方、自分がいる場所は内陸部。
田舎であるため、電気がなくても暖房や食料に事欠かない。
明りは私が持っている。
仕事が済めばそのまま釣行する予定だったため、宿泊の用意もある。
おまけに事務局長がテレビチューナー付きノートPCを持っている。
私が車からインバーターで電気を取って接続。

外は吹雪。
けっきょく、暖房・食事・情報の全てが満たされているこの場で夜を過ごした。
不謹慎な言い方だが、これだけ恵まれた中で震災第一夜を過ごした人間はそうはいなかっただろう。


3月12日

夜明け前、池のポンプを動かす発電機のトラブルに目を覚ます。
なんとか対応し、朝食を頂いた後、江合川漁協を後にする。

道路には、たまに地割れ・陥没が見受けられる。
震度6強ならこうなることは想定済み。

だが、最初に目にしたコンビニの人の列に唖然。

覚悟を決め、2件目のコンビニに入る。
店の中を1周するまで客が並んでいる。
精算は電卓計算、散乱する商品を子供たちが片付ける。
その光景を見かね、商品の片付けを手伝う客がいる一方、我先に商品を取っていく客もいる。
人間の本性が見えるな…。

1時間後、目的地である石巻市に向け再出発。

間もなく目的地という頃、見慣れない光景が広がっていた。

P1000307.JPG

ここは水田ではないはず…。
数百m進み、旧北上川の橋を渡る。
溢れ切った川に、大津波という現実を実感。

普段の倍の時間を要し、勤務先に帰還。

覚悟していたが、家に帰ることができない、あるいは帰る家がない同僚10名ほどが疲れきった姿で残っていた。
彼らに比べれば、私は十分に満たされている。
ほとんど食事をとっていないとの話に、先程1時間かけ、本来自分用に購入した食材を提供した。

今度は自分の無事な姿を家族に見せなければならない。

通常の帰宅ルートは、道路が冠水・崩壊しておりカーナビを駆使して裏道ばかりを利用。

P1000310.JPG

道中、多数の緊急車両が通り過ぎる。
思わず「頑張れ!」のひとりごと。

停電のため、まともに起動している信号はほとんどないが、通行は案外スムーズ。
普段よりも譲り合いの気持ちを感じる。

2時間後、無事に帰宅し一安心。

さらに数時間後、姉も帰宅。
生死が紙一重の状況だったようで、本人はもとより家族一同涙を流しながらもホっとした。


3月13日

気が休まる間もなく余震が続く。
2時間も眠っただろうか…。

夜明け前、隣の山形県の停電が復旧したとラジオで聞く。

意識が朦朧とする中で考える。

家族は楽観視しているが、あの状態では水と食料の補給は難しい。
ガソリンも心細くなってきた。
ただし、電気が通じていれば、ガソリンスタンドが営業しているはず。
通い慣れた山形県であれば、復路のガソリンが無くなっても何とかなる。
新庄まで行けば行きつけの釣具屋、フィッシングちゃっか屋で泊まれるだろうし、庄内にはSO君がいる。
帰りながら、ついでに江合川漁協での忘れものを受け取ろう。

迷う理由はない。
朝食を済ませ、念のための車中泊装備も整え、奥羽山脈を越える。

東根まで行き、ガソリンに関する状況が宮城県と変わらないことを知り愕然とする。
そこで、ちゃっか屋にTELし、最悪の場合のお願いをしておく。

だが、次にSO君と連絡が取れたことで全ての問題が解決!
ガソリンを満タン給油できる店があるという。
これがネット情報ならば真偽を疑うところだが、前日に本人が満タンにしたというのだから間違いない。

当然だが、それは真実であった。
50リットル近く給油し、灯油も2缶購入。
SO君の案内により何軒もお店を回り、食料やら必要物資を8割方購入。

ついでに温泉に浸かる。
断水地域にいる家族、その他被災者に申し訳ないが、今回は一種の賭けに出たようなもの。
だから、これくらいは自分へのご褒美だ。

そして新庄へ戻る。
ちゃっか屋で水をもらい、ミッション完了。

P1000312.JPG

ただ、オトリ缶に入れた水を飲むのは抵抗を感じる。
衛生的には問題ないはずだが、アユ釣り師としてのプライドが…(苦笑)

けっきょく、帰宅したのは20時近く。

P1000314.JPG

丸一日かかったが、これで当分の間、家族全員無事に過ごせることが可能になった。

昼食もとらずにお店を案内し買い物に付き合ってくれたSO君、そしてちゃっか屋店長、本当に有り難うございました。
家族一同、心より感謝しております。


3月14日

前日受けた指示により、塩釜市に向かう。

P1000315.JPG

ここでいきなりUターン。
海から何kmも離れているはずだが…。

目的の事業所は全く津波の被害を受けていない。
目の前が海で、付近は悲惨な状況なのに、不思議としか言いようがない。

大してやることもないので、県の事務所に顔を出す。

事業所に戻る途中、海上保安庁の巡視船の大音量の放送が響き渡る。
揺れもない中での津波警報。

全力疾走で車に飛び乗り、高台に向かう。

P1000319.JPG

この場を早く通り過ぎたい。
私自身、そして私の車をこのようにしたくない!

正直、生きた心地がしない。

P1000316.JPG

高台に避難し、一息つくまで、初体験の津波の恐怖をこれでもかというほど痛感。

そして帰宅。
天気がよいためか、家族全員ノンビリムード。
父に至っては、外に出てお菓子の袋を手にしている。
事の重大性を全く理解していないことに、正直、頭にきた。
外部の情報を得ていないと、こんなにも意識の差が出てしまうのだ…。


3月15日

このままでは生きるだけ。
本来の職務を全うするためには、足がない。
X-trailのガソリン残量はかなり余裕があるが、いざというときの県外への脱出も視野に入れると、これ以上消費しない方がよい。

そこで手に入れたのが自転車。

P1000328.JPG

これで行動範囲が一気に広がる。

P1000323.JPG

近所のガソリンスタンドは、朝の時点で長蛇の列。

P1000325.JPG

食料の補給も大変なことになっている。

消耗品の入手も困難。

P1000329.JPG

ただ、一つ気付き、感動した。
この店舗は地震発生後も営業したようだ。
しかも、可能な範囲で生きるための情報提供を済ませてている。
店員自身も大変なことになっているはずだが、本当に有り難う。

そして20時過ぎ、我が家は停電から復旧。
即座にテレビにかじりつく両親と姉。
いきなり映し出されたのは絶望的なまでの津波の映像。
母や姉はもちろん、父までもが号泣。
これでこの震災を現実のものと理解したのかもしれない。

さて、私自身の問題はほぼ解消している。
明日からは県庁に出向いてできる限りのことをする予定。
なるようにしかならないだろうが、絶対に最後まで諦めない。
やるしかないのだ!
posted by KIKU at 21:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 東日本大震災 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
被災した地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます<(_ _)>

kikuちゃんが無事でよかった!!
>オトリ缶に入れた水を飲むのは
俺もちょっとためらいます...

東京でもガソリンが無く米、パンが無い
なんで.....
Posted by masa at 2011年03月16日 00:43
大変な事を体験したんだね…
 ヒシヒシと伝わって来ます。
貴兄が無事でよかった。
 マッキーさんも心配してましたから。

むしろコレからが大変だと思いますが頑張って下さい。何かあればご一報下さい!
Posted by オサム at 2011年03月16日 02:56
がんばれ!kikuちゃん!

こちらも余震が続き、職場が避難所になってます。
倒壊家屋はないけれど、液状化で半壊家屋等の被害がでています。
Posted by turiken at 2011年03月16日 21:11
kikuちゃん
行動力が余裕を生んだんですね。
これからが大変でしょう。
こちらも大規模停電とのこと。
早々に帰宅します。
Posted by 太ハリス at 2011年03月17日 17:53
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